笑いヨガとは!笑いヨガの誕生と原理・効用
2022/09/02
笑いヨガ(ラフターヨガ)
笑いヨガ(ラフターヨガ)の誕生・原理・効用
笑いヨガ(ラフターヨガ)
笑いヨガ(ラフターヨガ)誕生・原理・効用
笑いヨガとは!
1 笑いヨガ(ラフターヨガ)の誕生
笑いヨガは、1995年にインドの内科医「マダン・カタリア」が発明した
笑いの体操とヨガの呼吸法(プラナヤマ)を組み合わせた
新しい「心身の健康運動法」です。
笑いは、昔から、心や身体に良い影響を与え、境遇さえも良くする
(笑う門には福来る)と言われてきました。
しかし、私たち日本人は、小学校高学年ぐらいから、成長するにつれて、
日常の生活でほとんど笑わなくなってしまいました。
幼児期の子どもは、1日400回笑っている(3.6分に1回)と言われています。
だから子供は明るく・元気でエネルギィシュなのです。
しかし、「楽しいことがあれば笑えるけど、苦しいことばっかりで笑えません」
多くの人に毎日笑っていますか?と聞くと、ほとんどこのような声が返ってきます。
でも、楽しいことが無くても、笑うだけなら笑えます。それが笑いヨガ(笑いの体操)です。
人間の脳は、本当の笑いも、作り笑いも区別がつきません。ですから、笑いの体操をすることで、
本当に楽しくて笑った時と全く同じ、精神的・肉体的効果を得ることができます。
2 なぜ、脳は本当の笑いも作り笑いも区別ができないか。
「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ!」(ウイリアム・ジェームス)
人間の脳は、「暗示感応性能」といって、言葉や体の動作、イメージによって
暗示にかかりやすい特性があります。
例えば、梅干をイメージすると唾液が出てきます。
これは、日本人には起こりますが、梅干をしらない欧米人では起こりません。
また、医者からとてもよくきく薬だといわれると、
実際は砂糖でも病気にきくようになります(プラシーボ効果)。
なぜなら、私たちの心と身体、そして意識はすべて脳によってコントロールされているからです。
ですから、脳がどう思うかで、そのあとの心や身体の状態が決まってくるのです。
また、意識の持ち方によって、言葉や行動も決まってきます。
脳が ポジティブになれば、言葉・行動もポジティブになり、
その結果、ポジティブな運命を引き寄せます。もちろんその逆もしかりです。
これを脳のS・O・S機能(脳が そう おもうと そうなる)と言っています。
ですから、笑いの体操により、脳が楽しい(そう おもう)と勘違いすることで、
楽しい時に起きるホルモンの分泌スイッチがONになり、快感モルヒネといわれる
「βーエンドルフィン」や「セロトニン」(幸せホルモン)「ドーパミン」(やる気ホルモン)が
分泌され、相対的にストレスホルモンと言われているコルチゾールが減少します。
結果的に、心がさわやかで安定し、やる気が起きてくる(そうなる)ということにつながってくるのです。
3 深呼吸(プラナヤマ)による効果
大きな声で笑う(笑いの体操)と、無意識に横隔膜を動かして深呼吸(ヨガの呼吸プラナヤマ法)
をしていることになります。
私たちは、普段、自分の肺を20%以下しか使っていません。
ですから、いつも 浅い・小さな呼吸をしています。
これでは、身体に取り込まれる酸素量は少なく、普段は、血中酸素量が少ない状態で生活しています。
しかし、笑いヨガで、連続的に深呼吸をすることによって、肺の中の不要な空気を追い出し、
その分、外の新鮮な空気を大量に取り込むことができます。
そのため、血中酸素量が通常の3倍ほどになり、血行・血流がよくなります。
さらに、大量の酸素が全身に運ばれるため、60兆個といわれる全身の細胞がすべて活性化し、
体の内部からエネルギーが満ちてきます。
これがアンチエイジング効果や自己免疫力を高めることになります。
また、脳に大量の酸素を運ぶため、脳が活性化し、意識が明瞭になり、物事の判断が的確で前向きになってきます。
なんといっても脳が活性化することで、現代人の一番の心配事である「認知症」の予防に
大きな効果を発揮することができます。
4 なぜ笑うことで病気が治ったり、健康を保持したりできるのか。
神様は、特別に人間にだけに「笑い」を与えた。
大哲学者ニーチェは、「人間だけがこの世で苦しみを感じるため、笑いを発明するほかなかったの だ」と言っています。
また、フランスの哲学者アランは、自著の幸福論の中で「笑うのは幸福だからではない。
むしろ、笑うから幸福なのだ」と述べています。
皆さんは、恒常性(ホメオスタシス)という言葉を知っていますか?
恒常性(ホメオスタシス)とは、自分の心と身体を守るための、自動健康維持機能です。
例えば、熱いときは、体温を調整するために汗をかきます。寒いと、毛穴が閉じたり、身体を震わしたりして 保持しようとします。心臓は寝ていても24時間、正確に全身に血液を送っています。
体内にガン細胞が発生しても、外からウイルスが進入してきても、
自動的に免疫細胞が働いて健康状態を保とうとします。
また、感情や体内機能の維持のために、私たちの体にはそれぞれの機能維持に必要な
無数のホルモンが、バランスよく分泌される仕組みがあります。
こうした、自律神経系・内分泌系・免疫系の3つの機能によって、私たちの心と身体は、
常に一番良い状態を保つように自動的に調整(恒常性)されているのです。
しかし、私たちの体に備わった恒常性(ホメオスタシス)が、今危機にさらされています。
それは、ストレスです。
ストレスによる過度な負担が、この恒常性(ホメオスタシス)のバランスを崩し、
精神疾患、病気、慢性的な体調不良という害を引き起こしているのです。
病気になれば医者に行く。もちろん必要です。しかし、もっと必要なのは、
病気にならないこと。病気になった原因(恒常性の不調)を治さないと、本当の健康にはなりません。
神様からのプレゼントである「笑い」こそが、恒常性を良い状態で維持する最幸の方法なのです。
笑う門には福来る。これまで、様々な医学的な実験で、笑うことで、
精神的にも肉体的にも健康になるということが証明されてきました。
5 以下に当てはまる人は笑いヨガをやりましょう。
〇 疲れやすい。元気が出ない。気力がわかない。
〇 慢性的に体調がすぐれない。偏頭痛がする。起立性障害と言われた。
〇 手足がだるい。めまいがする。
〇 寝つきが悪い。いつもイライラする。
〇 急に不安になる。心臓がドキドキする。
〇 食欲不振。便秘・下痢で困っている。
6 笑いと健康の医学的な実証結果
① 笑いで「膠原病」を治した。「笑い療法の父」
アメリカの「サタディ・レビュウ」誌の編集長「ノーマン・カズンズ氏」は、
1964年突然原因不明の難病である膠原病(こうげんびょう)にかかってしまいました。
医者からは治す方法がなく、治る見込みは500分の1と宣告されましたが、
彼は、世界中から様々な文献を取り寄せ、笑いが病気の回復に効果があることを知り、
大量のビタミンCの投与と合わせて、連日ユーモア全集を読んだり、
喜劇映画やコメディ番組のビデオを見たりして、大笑いすることにしました。
10分間大笑いすると、激痛が和らぎ、2時間はぐっすり眠ることができることを発見しました。
彼は、笑うことで、医者から見放された膠原病をわずか数か月で完治させ、
元の編集長に戻ることができました。(日本での題名「500分の1の奇蹟」)
また、後年の1980年、心筋梗塞に見舞われました。当時は、現在のようなカテーテル治療も、
バイパス手術もありませんでしたが、この時も、自前の笑い治療で心筋梗塞を克服し、
2度目の奇跡を起こしたのです。
② NK(ナチュラルキラー)細胞の活性化
現在話題になっている「免疫力」の基となるNK細胞。がん細胞やウイルスなどをやっつける
健康保持には欠かせない細胞です。
健康な人の体内では、1日に3000 ~5000個のガン細胞が発生しています。
しかし、これをNK細胞が破壊しているおかげでガンにおかされずにすんでいるのです。
この働きをNK活性と呼んでいます。
1992年、岡山県の「すばるクリニック」の伊丹仁朗院長と大阪府の「元気で長生き研究所」所長 の昇幹夫医師の二人により、大阪ミナミの演芸場で、がんや心臓病の人を含む、19人の方々に、
漫才や新喜劇を見て大いに笑ってもらった後、NK活性がどうなるかという実験が行われました。
実験の結果は、笑う前にNK活性が低かった人は、すべて正常値範囲までアップしました。
それだけではなく、NK活性が高すぎる人(自己免疫疾患になる可能性が高い)は、正常値範囲まで低下し、元々正常値範囲の人は変化しなかったという結果が得られたのです。
これにより、笑うことは、元々人間が持っている一番適切な恒常性(一定の良い状態を保つ働き)に戻す働きがあることが分かったのです。
また、伊丹仁朗先生は、1994年に、作り笑いでも同じ効果があるかどうかの実験をしています。
この実験で、現代の脳科学では当たり前になっている「脳は本物の笑いも作り笑いも区別できない」 ことが実証されました。
アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉です。「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ」
③ 関節リュウマチの症状改善
長年関節リュウマチとかかわってこられた日本医科大学の吉野愼一名誉教授は、
この病気が良くなったり悪くなったりするのは、精神的ストレスと密接に関係しているらしいと考えました。
そこで1995年1回目の楽しい笑いの実験を行いました。
実験は、関節リュウマチ患者のグループと健康な人のグループに、林家木久蔵さんの落語を聞いてもらい、その前後の気分の変化や痛みの程度、ホルモン、免疫機能等の変化を測定しました。
実験の結果、気分や痛みは大きく改善され、ホルモンにもかなりの変化が見られました。
特に、ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」が、関節リュウマチ患者では、
基準値まで下がったのです。
さらに、炎症を悪化させる「インターロイキンー6」という物質も患者群は下がりました。
そして、健康な人のグループでは、コルチゾール、インターロイキンー6は全く変化がなかったのです。
吉野教授は、さらに実験を重ね、2003年には、炎症を抑える「インターロイキンー1レセプター・アンタゴニスト」という物質が、笑いによって増加しており、この変化は、炎症の程度が高いほど顕著に現れていました。
これらの結果から、吉野先生は、「笑いは、乱れた機能を正常に戻す(恒常性・ホメオスタシス)とともに、身体のバランスをとって、それぞれが円滑に働くようにする。
そして、基準値以上の過激な働きはしない。そこが薬と違うところだ」と話されています。
④ 血糖値の上昇抑制
筑波大学名誉教授で、遺伝子の世界的権威であった故「村上和雄」先生は、
笑いの効用を科学的に実証するため、生活習慣病の一つとされる糖尿病に着目しました。
血糖値は、イライラとか苦しみとか悪いストレスが加わると上がる。
だから、良いストレスである「笑い」が加われば下がるのではないかと考えました。
そこで2003年に中高年の糖尿病患者に協力してもらい、2日間にわたって、
次のような実験を行いました。
初日は、昼食直後に専門的な講義を受けてもらいました。
2日目は、同じく昼食直後に40分間、漫才コンビのB&B(島田洋七・洋八)の漫才を観てもらいました。
この当時のB&Bは全盛期で、糖尿病患者も本当に大爆笑をしたそうです。
結果は、予想通り、初日は昼食直後は、血糖値が急上昇しましたが、
2日目の血 糖値の上昇は、1日目の半分程度に抑えられていました。
糖尿病患者は、インスリンを注射して血糖値を抑えるしか方法がなかったのに、
大笑いするだけで大幅に抑えられるのは、画期的なことだと話されています。
⑤ 笑うとストレスが軽減
ストレスは、小さなうちは行動のモチベーションになったりするのですが、
ある一定以上になると、精神的・肉体的・行動的に大きな障害になってきます。
現代人はストレスの台風の中で暮らしていると言われています。
ですからストレ スに対する抵抗力の増加は近年の大きな課題になっています。
そこで、大阪府立健康科学センターでは、2002年から、「健康落語道場」を定期的に行い、
その前後でのストレスホルモンの変化を調べてきました。
同センターの第1回から7回までの健康落語道場の参加者において、ストレスを感じると分泌される「コルチゾール」と「クロモグラニンA」について落語を聞く前後での変化を調べました。
コルチゾールは、半数以上の人が減少し、クロモグラニンAは4分の3近くの人が減少していました。
もちろん、元々正常値範囲の人には大きな変化は見られませんでした。
⑥ 笑ったらアトピーが良くなった
大阪府の守口敬任会病院の木俣肇アレルギー科部長は、笑いがストレス解消やNK細胞の活性化に
効果があることを知り、アトピー性皮膚炎の患者をコメディ映画を観て笑ってもらうグループと
天気予報を観てもらうグループに分けた実験をしました。
その結果、コメディ映画を観たグループは、天気予報を見たグループより、
アレルギー反応が減少しました。
また同時に行った聞き取り調査では、かゆみも減少することが分かりました。
さらに木俣先生は、ダニアレルギーのある乳児を対象に、母親の笑いの影響について調べました。
母乳には、食欲のコントロールやストレス、アレルギー反応を抑制する「レプチン」というホルモンが含まれています。
漫才を観て、笑いながら授 乳した時は、レプチンが増加し、乳児のダニアレルギー反応が軽減されたのです。
また、ダニアレルギーのある乳児に、母乳ではなく、笑いながらミルクを与えた場合でも、
乳児のアレルギー反応は軽減しました。
⑦ 笑うことで脳が活性化
中央群馬脳神経外科病院の中島英雄理事長は、脳のリハビリを兼ねて「病院寄席」を月1回開いています。
実験は脳疾患の患者さんの協力で、病院寄席の前後の脳の血流量(脳への酸素の供給量)の変化を調べました。
実験の結果は、6割以上の患者の血流量が増加し、約4分の1の患者は減少していました。
しかし、さらに調べてみると、血流量が増加した人は、落語が面白かったと感じた人、
つまり笑った人で、低下した人は、面白くなかったとか疲れたと感じて笑わなかった人でした。
また、患者の脳波も調べてみると、落語を聞いて笑った患者の脳波は、α波(リラックス状態)と
β波(考えごとや緊張)が増え、δ波・θ波(脳機能の低下)が激減することが分かりました。
笑うことで、脳がリラックスするとともに脳の働きが良くなることにより
「緊張」し「機能低下」から回復することが実証されたのです。
⑧ 笑いで遺伝子のスイッチがON
前述の遺伝子学の世界的権威である故村上和雄先生は、ライフワークの一つとして、
笑いと遺伝子のON・OFFについて研究されてきました。
村上先生は、遺伝子の97%は眠っていて、フル稼働していない。
眠っている良い遺伝子をONにして、悪い遺伝子をOFFにできれば、
可能性は無限大になると考えています。
例えば、がんになる遺伝子をOFFにして眠らせたままにしておけば、人間はガンにならないと考えたのです。
こうした遺伝子のスイッチの「ON」「OFF」を実証するために、2004年大阪府大東市における「大東ダイナミックプロジェクト」で次のような実験を行いました。
健康な人24人を2つのグループに分け、一方のグループには生の漫才等を観てもらい、
もう一方のグループには、関係のない講義のビデオを観てもらいました。
そして2週間後には、グループを入れ替え、同じ実験をしました。
その結果、漫才等の鑑賞の後では、多くの遺伝子のスイッチが「ON」「OFF」していることが分かりました。
特に代謝に関する遺伝子は、時間が経つにつれ「ON」になる遺伝子が増え、
「OFF」になる遺伝子が減少しました。
これは笑いが、身体の新陳代謝を活発化していることを示している証明です。
また、NK活性と遺伝子の関係についても、NK活性が上昇した人は、免疫反応に関する
遺伝子が「ON」になり、低下した人は「OFF」になっていることが分かりました。
この結果、笑いが免疫の働きを調整することが、遺伝子レベルでも証明されたことになりました。